第116回 エンリコ・モレッティ『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』

エンリコ・モレッティ『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』

皆様、こんにちは。本日は、エンリコ・モレッティ『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』(プレジデント社)をご紹介したいと思います。

エンリコ・モレッティ『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』

内容紹介

 かつて、良質な雇用と高い給料は、工場製品の大量生産と密接に結びついてていた。工場こそが経済的価値の生まれる場だった。しかし今日は誰でも作れるような製品を生産しても大きな価値を生み出せない良質な雇用と高い給料の供給源は、次第に新しいアイデア、新しい知識、新しいテクノロジーを想像する活動に移ってきている。そうした変化は今後も続き、さらに加速するだろう。それに伴い、イノベーション能力に飛んだ人的資本と企業を引きつけようとする国際競争が激化する。そして、人的資源がどこに集まるかは、地理と集積効果の影響をいっそう強く受けるようになる

エンリコ・モレッティ『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』

最近まで、グローバル化と情報化の急速な進展に伴い、ある人が地理的にどこに住んでいるかは大きな意味を持たなくなると言われていました。

誰もがスマートフォンを通してインターネットにつながり、ネット通販を使えば、家にいながら欲しいものが手に入るからです。極端な話をすれば、ネット回線があり、クロネコヤマトの配達圏内でAmazonが使えれば、住む場所はもはや大きな意味を持たないと主張する人さえいるほどです。

しかし、現実はこの主張と全く逆のことが起きています。

アメリカのシリコンバレーは存在感を失っていくどころか、年々ハイテク産業を中心に繁栄を続けています。日本の場合を見ても、あらゆる産業・モノの東京への一極集中は止まる気配すらありません。

これらの地域が、他の地域を圧倒するほどに繁栄する最大の理由は、イノベーション産業の発達だと筆者は述べています。

イノベーション産業は「雇用の増殖」とも呼ぶべき魔法のような力を持ちます。それによると、イノベーション産業は、他の産業に比べ、雇用の創造力が高く、良質で高給な雇用を生み出すというのです。

そしてイノベーション産業はその性格上、高いスキルを持った働き手を求めます。よって、イノベーション産業は、教育レベルが高く、人的資本が豊富な地域へ集中します。結果、地域間での格差をいっそう強まり、タイトルにもある通り、年収は「住むところ」で決まってしまうのです。

本書では、「なぜイノベーション産業は雇用を増殖させるのか?」「なぜイノベーション産業は特定の地域に集中するのか?」といったイノベーション産業の性質を理解し、「住むところ」が我々の生活に及ぼす影響を学びます

感想

本書の内容によれば、「住むところ」によって年収だけでなく、なんと平均寿命、離婚率、政治参加、非営利組織への寄付などの値も決まってしまうそうです。

理由は様々なのですが、その一つに教育レベルが挙げられていました。

教育レベルが高い地域では、それが低い地域に比べて、年収、平均寿命、離婚率、政治参加、非営利組織への寄付のすべての値が有意に高くなります。

しかし、これは特に目新しい知識ではありません。「学歴(教育レベル)が高ければ、年収が多くなる」という傾向は、世の中でも広く認識されている事実だと感じます。

実際には、教育レベルが地域格差に及ぼす影響はもっと複雑で、それは「社会的乗数効果」と呼ばれるものでした。

簡単にいうと、教育レベルの低い人が、自分と同じように教育レベルの低い人たちに囲まれて生活すると、より不適切な習慣を身につけやすいというものです。

周りに喫煙者が多いと自分もタバコを吸い、周りが選挙に行かなければ自分も行かない、といったように単なる教育レベルの低さの影響が、周囲の環境によってより増幅されてしまうのです。

年収に関して見てみると、教育レベルが最高の地域の高卒者と教育レベルが最低の地域の大卒者では、前者の方が所得が高いという調査結果を得られているというのです。

私自身、情報化の進展と物流の発展により、今後「住むところ」はそれほど大きな意味を持たないだろうと考えていました。しかし、現実はその逆で、「住むところ」こそが生活のあらゆる面に影響を及ぼすというのです。

こうなれば大都市への移住も真剣に考えなければいけなのかもしれません…

評価

※個人的な評価となります。

総合評価:

はじめは、都市と地方を比較して、地域格差に関する豆知識のようなものを書いた書籍かと思っていましたが、それは大きな思い違いでした。

本書は、現在世界中で問題となっている地域格差について、非常に本質的な議論を展開しています。また、主張の根拠となるデータをきちんとした調査から得られたもので、参考文献も多く、その信憑性は高いと思われます。

経済学的な内容ですが、難しい経済学の用語はほとんど使用されておらず、多くの人におすすめできる書籍です。

こんな人におすすめ

  • 「イノベーション産業の今後について興味がある」という人
  • 「現代の地域間格差について学びたい」という人
  • 「『住むところ』が生活に及ぼす影響を知りたい」という人

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